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日本全国に残る洋館を紹介していきます。


by okuruma1970y

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黒羽根内科医院(群馬)

また少し空いてしまいましたが、25件目は群馬県伊勢崎市の病院兼住宅をご紹介します。


旧黒羽根内科医院は、群馬県 伊勢崎市 曲輪町(地図)にある病院兼住宅で、木造横羽目板張り2階建ての建物は明治45(1912)年に建てられました。
当初は、伊勢崎藩医の家系(娘婿)であった今村信四郎が、今村医院として同市本町に建てた後、戦後に黒羽根氏が購入して黒羽根内科医院となり、昭和59年まで使われていたそうです。

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その後、平成14年に伊勢崎市に寄贈され、本町から曲輪町まで100mほど曳き家(解体せず建物ごと移動させる工法)した上で、現在地で復元修理が行われました。
棟札から、設計技師:阿部石松、棟梁:藤丸兼吉、副棟梁:相崎倉吉によって建てられたことがわかっています。

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市民の公募により「いせさき明治館」と名付けられ、現在は街の拠点施設として利用されています。






2階中央部には玄関ポーチ上のバルコニーに出るための扉があり、窓自体は四角い開き戸ですが、その上部にはアーチ状の装飾がされています。

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凝った桟の上げ下げ窓の周りには装飾がされていますが、2階(左)と1階(右)の意匠を違えるなど、基本に忠実な作りになっています。
単なる模倣ではないようですが、設計技師・阿部石松とは何者だったのでしょうか。

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建物は完全な四角構造ではなく、庭や祭りなど何かの眺望のためなのか、物干しのためなのか、2階後方の一部が切り欠かれてベランダになっており、曳き家前の配置が気になります。
また後方には、横羽目板の洋館とは異なる従来様式の和館が連なって建てられています。
瓦葺きの屋根には、通気口と思われる屋根窓が設けられています。
ベランダ下は診察室になっており、大きな窓で採光を確保しています。

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軒に細かいピッチの持ち送りを備えた玄関ポーチは、上部に手すりを設けてベランダになっています。
また軒下にはガラスがはめ込まれ、玄関引き戸上部のガラス窓と相まって、採光を考慮した造りになっています。
洋風の外観に引き戸の玄関という組合せは珍しいですが、施主の意向だったのでしょうか。

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引き戸の玄関を入ると、玄関にある小さな受付の窓と、畳張りの待合室に面した薬局の窓口が、ガラス扉を隔てて並んでいます。
館内の漆喰壁は白ではなく若干灰色がかっています。

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薬局の奥には板張りの診察室がありますが、大きな窓に加えて、白漆喰で診察しやすいよう室内を明るく仕上げています。
天井蛇腹や照明を吊す基部の円形装飾などは他でもよく見られますが、階段下の突起部の凝った木工細工は、富豪邸の階段室でときどき見られるものです。

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薬局と診察室の間には2階への階段と、電話室があります。
電話室も富豪邸ではときどき見られますが、この病院の場合は患者が使うというよりも、近所の方々が使うことを想定していたのかもしれません。

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階段は薬局脇にあるものだけでなく、従来様式の奥の部分への廊下にある階段もありますが、狭いスペースに設けられたため、曲げが急で踏み段が小さいものでした。

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2階は外廊下になっており、下部の手すりを含めてガラス戸で開くようになっていて、細い桟の上部障子からも採光できるようにしています。
廊下の奥は2階ベランダです。

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洋館2階は畳張りの客間で、欄間を備えた障子で仕切って大広間にもできる、典型的な和風建築の造りになっています。

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2階客間の通りに面した部分は、和室ながら外観に合わせた上げ下げ窓。
窓側は板張りになっていて、その上には中央部が凹んだ仕切り壁が設けられています。
日本建築ではときどき見られるものなのか、単なる装飾なのか、何かの目的があっての構造なのか、あまり見たことがないです。

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通りに面しているので外観はいつでも見られますが、館内はいつも見られるというわけではないようで、伊勢崎市の情報ではないものの、第一・第三日曜日に館内公開されているようです。
見に行ったのは、復元工事が完成した平成17年(2005年)4月でした。
Nikon CoolPix E-5000(500万画素)で撮影。

伊勢崎市(いせさき明治館)のHPはこちら
ホームページ洋館探訪の「群馬の洋館」ページはこちら




by okuruma1970y | 2012-03-20 14:06 | 関東甲信越